この里に住む人々の暮らしを、おりおりにご紹介します。

 イモの粉  
 記憶

当ても無く集落を歩いていると、顔見知りのおばさんが冬の西日を浴びながら、ジャガイモを洗っている。いったん通り過ぎたが、子供の頃の記憶が蘇り、「イモの粉」を作るんですかと尋ねる。「そうだけど、知ってるかい」と聞かれ、小さい頃母親とよく作りました、と答える。
 
昔、この時期になると親戚が集まって、売り物にならないジャガイモをすり潰し、「イモの粉」を作った。嬬恋の「男爵」イモはデンプン質に富み、上質なデンプン粉が製造出来た。
今では殆んど見られない光景だが、幼かった頃の自分に出会えたようで、無性に嬉しくなった。
片栗粉  
 ミキサー

ジャガイモをすり潰す作業が大変だが、今ではミキサーを使っていると言う。考えたものだ。すり潰されたイモがジュース状になってポリバケツに落ちる。小さなイモが次から次へと放り込まれていく。なかなか合理的だ。
その昔、馬鈴薯の本場であった田代集落では、商品として大々的作られていたと聞く。
 
上澄みをこぼすとそこに純白の「イモの粉」。一般には「片栗粉」と呼んでいるが、私にとっては飽くまでも「イモの粉」。「黒粉」は何処ですかと尋ねると、おばさんは発砲スチロールの箱を指差した。そこにはジャガイモの皮。ミキサーでは皮を省くので、「黒粉」は作れないと言う。
残念。「黒粉」のせんべい焼きが頭を過ぎる。

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